花粉症とは

花粉症とは花粉(アレルゲン)によるアレルギーのことで、症状は主に目と鼻に現われます。
意外なことに、「スギ花粉症」は、最近(1960年代)になってから「これはアレルギーである」と明らかにされた病気です。
一方、イギリスでは古くから農民が牧草を刈り取ってサイロに収納する際に現れる目のかゆみ、鼻、のどの痛みが「枯草熱(こそうねつ)」として知られていましたが、これは現在、イネ科アレルギーであることがわかっています。
近年、花粉症の患者数は年々急増し、今や全国で2,000万人と推定されています。
花粉症はアレルギー疾患なので、早期に完全に治すことは難しく、日常生活に大きな支障をきたします。
しかし、花粉を回避しながら薬剤を上手に用いて治療を行えば、花粉症をコントロールすることができます。

花粉症の症状

まず目のまわりがかゆくなり、まぶたがはれぼったくなり、結膜がはれます。
重症になると結膜に浮腫(ふしゅ)が生じます(外から目が見えないくらいにはれる)。
かゆいので擦(こす)ったり、かいたりするとさらに悪化し、結膜(けつまく)や角膜(かくまく)を傷つけ、
目がゴロゴロしたり、かすんだり、まぶしく感じたり、痛みが出たりします。
ときには涙の洪水に襲われます。
このほか鼻、のど、気管支、胃腸にもさまざまな症状が現われ、全身の倦怠感(けんたいかん)や発熱が出る場合もあります。

〈アレルギー多発地帯〉
まぶたは眼球をおおって、外からのいろいろな刺激から目を保護しています。
「アカンべー」で見えるまぶたの裏側から角膜(黒目)のふちまでおおっているのが結膜(白目)です。
結膜は、涙と結膜から分泌(ぶんぴつ)される脂様(しよう)の物質でいつもぬれていて、
角膜が乾いて傷つきやすくなるのを防ぎ、眼球の動きを滑(なめ)らかにするという重要な役割をはたしています。
ところが、いつもぬれているので花粉がくっつきやすく、アレルギー反応の多発地帯となっています。

花粉症のメカニズム

ヒトは外部の異物(たとえば細菌やウイルス)や、異常な細胞(ガンの原因になることもある)が発生したときに体の中に抗体を作り、
異物や異常細胞を排除する免疫(めんえき)という機能をもっています。
免疫は本来、生体にとってプラスの働きをするはずなのに、時と場合によってはマイナスの働きをして病気を起こし、ヒトを苦しめます。
これがアレルギーです。

抗体の1つであるIgE抗体(アイジーイーこうたい)は、普通のヒトには全く害のない花粉などに対して過敏に反応し、
アレルギーを起こす悪役として有名になりました。
IgE抗体を多く作りだす体質のヒトがアトピー体質、あるいはアレルギー体質と呼ばれます。
まず花粉(アレルゲン)が結膜にくっつくと、IgE抗体が作り出されます。
侵入したアレルゲンと作り出されたIgE抗体とが反応してヒスタミンなどの化学伝達物質を吐き出し、アレルギー症状を引き起こします。

ヒスタミンは、結膜表面に存在する神経を刺激してかゆみを引き起こします。
さらに血管に作用して血管壁をゆるめ、血液中の水分や白血球を血管の外へ滲(し)み出させてしまいます。
滲み出した白血球によってまぶたのはれ、結膜の浮腫が生じます。
アレルギー体質のヒトは普通のヒトに比べ、ヒスタミンに対してはるかに敏感だといわれています。

花粉症の原因

花粉は、風によって飛ばされ、花粉症の原因となります。
代表的植物はスギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなどです。
花粉症の原因となる植物は約60種類といわれますが、風によって花粉が運ばれるという共通点があります。
日本は南北に細長く、土地によって花粉症の原因植物は異なり、花粉の飛散時期が異なります。
また同じ植物でも北と南の地方では飛散時期が異なります。

〈代表的な原因植物〉
原因植物は大きく樹木と草花に分けられます。
現在の日本の人口の約10~20%がスギ花粉症にかかっているといわれ、目の症状はスギ花粉症の約95%にみられるといわれます。
花粉は日本列島の南方で2月上旬から飛散しはじめ、気温の上昇にともなって次第に北上して4月の中旬まで続きます。

花粉症の診断

医師の診察を受けて花粉症と診断されたら、皮膚反応検査などいくつかの検査を受けるケースがあります。
花粉が飛ぶ季節に入ったら花粉からなるべく遠ざかるようこころがけましょう。
目がかゆい、まぶたがはれる、目が赤いなど症状が出たら眼科医の診察を受けましょう。
花粉症と診断されると、原因となるアレルゲンを正確に把握するためいくつかの検査を受けることになります。

スクラッチテスト
アレルゲンのエキスを腕の皮膚の上に1滴たらして針で引っかき、
アレルギーの反応である膨疹(ぼうしん・皮膚が盛り上がるはれ)や発赤(ほっせき・皮膚が赤くはれる)を見て、
アレルゲンを確定するテストです。

皮内テスト
アレルゲンと疑われる花粉などのエキスを直接皮内に注射して現われる膨疹や発赤を測って、アレルゲンを確定します。

花粉症の薬物治療

花粉症の症状が出たら、悪化しないように対症療法をきちんと行います。
対症療法に用いる薬剤としては、抗アレルギー薬のヒスタミンH1拮抗薬とメディエーター遊離抑制薬、副腎皮質ステロイド薬などがあります。
これらを医師の指示に従って点眼または内服します。

〈抗アレルギー薬(ヒスタミンH1拮抗薬、メディエ-タ-遊離抑制薬)〉
ヒスタミンH1拮抗薬はかゆみを引き起こすヒスタミンの作用を直接阻止するので、主にかゆみのある時に処方されます。
メディエーター遊離抑制薬はヒスタミンなどを増やさないようにする作用があり、効果が現れるまでに2週間くらいかかります。
そのため、花粉が飛散する2週間くらい前から点眼を開始し、飛散期間中の症状を軽減するという治療法によく使われています。

〈副腎皮質ステロイド薬〉
薬の効果という点だけ考えると、ステロイドは非常に強力な症状の改善効果を示します。
花粉症だけでなくアトピー性皮膚炎、気管支喘息、さらにリウマチなどにも使われている薬です。
ところが効果の反面、副作用も強いので長期間使っていると副作用によってさまざまな異常が現われ、
花粉症より深刻な病気になってしまう場合もあります。

薬を点眼または内服して症状がおさまったからといって花粉症が治ったわけではありません。
ただし根気よく治療を続けると、次第にアレルゲンに反応しにくくなり、症状が軽くなっていきます。
医師の指示に従ってきちんと治療を受けることが大切です。

生活上の注意点

花粉の飛散時期には花粉から遠ざかることが第1です。
現実には花粉の完全シャットアウトは不可能なので、次の点に留意して、医師の指示に従いましょう。

1.外出はなるべく避けましょう
2.マスク、眼鏡、帽子、マフラーを着用して花粉を遠ざけましょう
3.花粉を家の中に入れないようにしましょう
4.ファストフードや加工食品の摂りすぎに注意し、バランスのとれた食生活に改善しましょう
5.たばこやお酒、刺激性の強い香辛料などの摂取は控え目にしましょう
6.皮膚を鍛え、ストレスをなくすよう心がけましょう